あなたの足元にいる生きものは、どこから来たのか
イヌの起源はオオカミのどの集団なのか。ネコはいつから人間と暮らし始めたのか。ウマとロバは家畜化のなかでどう分かれたのか。本書は、最新のDNA解析と化石証拠から、身近な動物たちの「家系図」を一冊で描き直す。
NATURAL HISTORY / ベレ出版 2023
イヌもネコもヒトも、
みんな進化していまここにいる。 ― 単行本 帯コピー
分子系統学のHKYモデル(長谷川・木村・八木 1985)を共同提案した統計遺伝学の権威・長谷川政美が、イヌ・ネコ・ウマ・スズメから昆虫・植物・菌類まで、身近な生きものの起源と進化を最新の系統樹で読み解く327ページ。家系図(系統樹)・図版・写真をふんだんに掲載した、ささやかな現代版『種の起原』。
どの生き物もそれぞれ与えられた環境に適応して生きているが、
― 本書「まえがき」より(著者: 長谷川政美)
それはあくまでも祖先がたどってきた過去の歴史を引きずったうえでの話である。
家のソファにいるネコは、いつ、どこで、どの祖先からネコになったのか ── 本書を読むと、家・庭・通勤路で出会う生きものに、すべて「来歴」が見えてくる。
イヌの起源はオオカミのどの集団なのか。ネコはいつから人間と暮らし始めたのか。ウマとロバは家畜化のなかでどう分かれたのか。本書は、最新のDNA解析と化石証拠から、身近な動物たちの「家系図」を一冊で描き直す。
もしキノコが存在しなかったら森はどうなっていたか。昆虫と被子植物はなぜ同時期に爆発的に多様化したのか。本書の第2章・第3章は、生物界の地味な主役たちの共進化史を、系統樹を通して立体的に描く。
第4章では、系統樹研究の最前線、分子進化の中立説とその先、さらには「音楽の起源を進化学的に探る」というテーマまでを射程に入れる。HKYモデルの共同提案者である著者ならではの、進化生物学の現在地レポート。
系統樹を「読める」ようになるための、信頼できる現代版『種の起原』として読まれるべき一冊。
1985年に発表された Hasegawa-Kishino-Yano(HKY)モデルは、塩基置換速度に偏りがある現実をシンプルに反映した進化距離モデルで、いまも分子系統樹推定の標準ツール群に組み込まれている。本書はその提案者本人が、ごくありふれた身近な動物・植物・昆虫の起源を、専門ジャーゴンを最小限に抑えて一般読者に開くために書いた一冊である。一次研究者本人が書く進化生物学読み物として一級の信頼性をもつ。
第1章はイヌ・ネコ・ウマ・スズメといった「読者の生活圏に確実にいる動物」から始まる。これは進化生物学読み物として極めて優れた導線で、読者は自分の足元から地球史にスケールアウトしていく感覚を持ち続けられる。系統樹を「自分との距離」で読めるようになる、という効用がこの本の最大の貢献である。
本書はテキスト中心の啓発書ではなく、生き物の家系図(系統樹)・標本写真・地理分布図・進化過程の模式図をふんだんに織り交ぜた図譜的な一冊である。四六判・並製のサイズ感も持ち歩きやすく、見開きで系統樹を眺める読書体験ができる。「進化を頭だけでなく目でたどる」ことに重きが置かれている。
著者には『DNAに刻まれたヒトの歴史』『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史』『進化38億年の偶然と必然』『ウイルスとは何か』など、進化と分子系統学を扱う著書が多数ある。本書はそのなかで「身近な生きもの」を切り口にしている分、入門者にとって最初の一冊として最も心理的なハードルが低い。読み終えると著者の他の著作(より深い専門領域)へと自然に進める読書地図のスタート地点でもある。
系統樹・分子進化・共進化 ── 進化生物学が日常語に翻訳される瞬間に立ち会う前に、用語の輪郭をつかんでおく。
Concept 01
生きものの家系図。共通祖先からどう枝分かれしてきたかを表す図。本書では化石証拠とDNA解析の両方から組まれた最新の系統樹を、見開きで何度も提示する。
Concept 02
長谷川・木村(篤太郎)・八木(幸司)が1985年に共同提案した、塩基置換速度の偏りをシンプルに織り込んだ分子進化距離モデル。分子系統樹推定の標準モデルの一つとして世界中で使われ続けている。
Concept 03
ヒトとの長い共生のなかで、野生種から離れた特性をもつ系統が定着していくプロセス。第1章のイヌ・ネコ・ウマ・ロバは、それぞれ異なる時期と地域で家畜化が起こったことが最新研究から見えてきている。
Concept 04
植物と昆虫、植物と菌類のように、相互に影響を与えながら同時に進化していく現象。第2章・第3章はこの共進化を縦糸に、植物・菌・昆虫の進化史を一つの織物として描く。
Concept 05
DNA配列の変化速度から、種が分かれた年代を推定する手法。化石が残らない系統(植物・菌類・昆虫)の進化年代を推定する強力な道具で、HKYモデルなどの進化距離モデルと組み合わせて使われる。
Concept 06
ある祖先種から短期間に多くの種が分かれて、さまざまなニッチを占めていく現象。スズメ類が「鳥類最大グループ」となった理由や、被子植物の爆発的多様化の理解に欠かせない概念。
出版社公式紹介ページに記載された章構成を、本ページ用に整理した。具体的な扱い対象から、進化生物学のどの領域に踏み込むかが見える。
身近な動物たちの起源イヌ(伴侶動物の起源/オオカミとの関係) / ネコ(イエネコ進化史) / ウマ・ロバ(文明への影響/家畜化) / スズメ(鳥類最大グループの多様性)
植物とそれに依存する生き物たち植物の起源/菌類との共生/陸上化と多様化/「もしキノコが存在しなかったら?」
大繁栄する昆虫たち昆虫の起源と多様化/植物との共進化(花の出現と昆虫)/海を越えた動物たち
進化する進化生物学分子系統学の最前線/中立説のその先/音楽の起源を進化学的に探る/生物学者から読者へのメッセージ
出典: ベレ出版 公式書籍紹介ページ「進化生物学者、身近な生きものの起源をたどる」(2023年8月時点・著者プロフィール掲載日)。各章の小見出しは公式紹介の文言を要約したもの。
サイト運営者による、一読者としての記録。書評ではなく、読後に残った感触を書き留めたもの。
四六判327ページ・2,420円。手に取ると、思っていたより軽い。装丁は表紙の水彩イラスト ── クジラ・ホッキョクグマ・ネコ・チョウ・カブトムシ・シーラカンス、そして帯に「イヌもネコもヒトも、みんな進化していまここにいる」「ささやかな現代版『種の起原』」 ── からして、これは硬派な分子系統学の専門書ではなく、もう少し親密な一冊だと知れる。読み始めてすぐ、これは図譜と読み物の中間にある本だと分かった。系統樹の図版・進化過程の模式図・地理分布のスケッチが、文章の合間に当たり前のように差し込まれていて、文字だけで進めるよりも目の動きが多い。
読み進めて最も刺さったのは、「家畜化(Domestication)」の章だった。ネコは、人間が「飼った」というより、人間の集落で増えるネズミを追いかけて自分から人間社会の隣に住み着いた、という最新のDNA解析結果が紹介される。イヌの起源も、単純に「オオカミを人間が飼い慣らした」ではなく、もっと古くて複雑な分岐が複数地域で起きていることがHKYモデル系の分子時計推定で示されている。家のソファで眠っているネコが、自分の家の延長ではなく、約9,000年スケールの人類史の途中に偶然ここに座っているのだ ── という距離感が、読書中ずっと頭から離れなかった。
具体として一番残ったのは、第3章「大繁栄する昆虫たち」のなかで触れられる、植物と昆虫の同時多様化の話だった。被子植物が花を進化させた時期と、昆虫が爆発的に多様化した時期がほぼ一致する。本書はこれを「共進化(co-evolution)」というフレームワークで提示しつつ、「もしキノコが存在しなかったら森はどうなっていたか」という思考実験まで地続きに繋げてくる。植物・菌類・昆虫を一冊のなかで縦糸として通すと、こんな景色が見えるのか、という発見があった。
本書を貫いているのは、「いまそこにいる生きものは、すべて過去の偶然と必然の積層である」という静かな立場である。神秘化もしないし、進化を擬人化もしない。HKYモデルの提案者本人だからこそ書ける、淡々とした、しかし深い系統樹的視座 ── これが読み終えたあと一番手元に残った。
正直に書くと、第4章「進化する進化生物学」は、第1〜3章までの「身近さ」の流れから一段ギアが上がる。中立説・分子時計・「音楽の起源を進化学的に探る」など、扱う話題が一気に広がり、専門用語の出現密度も高くなる。生物学・遺伝学に馴染みのない読者は、ここで一度ペースを落とすことになるかもしれない。逆に、第1〜3章で「系統樹を読む筋肉」を鍛えてから第4章に向かうと、HKYモデル提案者ならではの現代進化学レポートとして読める ── そういう設計になっている。
朝の通勤路でハトの群れを見て「ハトはどこから来た鳥なのか」、夜のベランダでヤモリを見て「ヤモリと自分はどこで枝分かれしたのか」を考えたくなる ── そういう、読書体験が日常の知覚をひとつ深くしてしまう類の本だった。生き物が好きな人にも、家畜・ペットの歴史に興味がある人にも、進化生物学の現在地を信頼できる一次研究者本人から手渡されたい人にも、最初の一冊として推薦できる。
― nia-project / 2026年5月 通読
ダーウィン『種の起原』、リチャード・ドーキンス『盲目の時計職人』『祖先の物語』のような、進化を一冊で見渡したい古典派の読者へ。本書はその現代日本語版・身近編として最適な一冊。
イヌ・ネコ・ウマと暮らしている人、家畜やペットの「来歴」が気になっている人へ。第1章だけでも、家のソファのネコが過去9,000年スケールの人類史の途中にいることが体感できる。
子どもと一緒に読める進化の本を探している保護者・先生へ。系統樹図・写真・図版が豊富で、四六判のサイズも親子で見開きを覗き込みやすい。生き物に夢中な小学生〜中学生の知的好奇心の伸びる入口になる。
分子系統学・進化遺伝学の研究や授業に関わっている方へ。HKYモデル共同提案者本人による、一般向けの語り口で書かれた進化学読み物として、教材リストに加える価値のある一冊。
2023年10月19日発売のベレ出版・四六判並製。Amazon(紙/Kindle)・楽天ブックス(紙)で配信中。楽天Kobo版は2026年5月時点で確認できず。
Amazon
紙書籍(四六判・327頁)
2,420円(税込)
Amazonで購入するPrime対応/在庫安定
Amazon Kindle
電子書籍(Kindle版)
電子版(価格は販売ページ参照)
Kindle版で購入する即時配信/系統樹図の可読性は紙の方が高い
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紙書籍
2,420円(税込)
楽天ブックスで購入する楽天ポイント対応
本書は2023年10月発売のベレ出版・単行本(四六判並製・327頁)です。系統樹図・写真・図版が見開きで楽しめる構成のため、紙書籍が読書体験としては優れます。電子で即時に読みたい方はAmazon Kindle版が便利です。楽天Kobo版は2026年5月時点で楽天Koboストアでの確認が取れていません(配信状況は変動する可能性があります)。
ベレ出版の自然科学・生物ジャンルに位置づけられた一般読者向けの進化生物学読み物で、四六判327ページ・2,420円(税込)の単行本です。第1章で身近な動物(イヌ・ネコ・ウマ・ロバ・スズメ)、第2章で植物・菌類、第3章で昆虫、第4章で進化生物学そのものの新展開を扱います。系統樹図・写真をふんだんに掲載し、難しい数式は最小限に抑えてあるため、進化や生物の系統関係に興味のある一般読者・親子読書にも開かれた構成です。著者は分子系統学のHKYモデル(長谷川・木村・八木 1985)を共同提案した統計遺伝学者・長谷川政美氏(統計数理研究所名誉教授)で、最新研究を踏まえた信頼性の高い記述が特徴です。
Amazon Kindle版は配信されています(当ページのCTAから購入可能)。楽天Kobo版は2026年5月時点で楽天Koboストアでヒットしておらず、配信されていない可能性があります。電子で読みたい方はKindle版が確実です。紙書籍は四六判・並製・327ページの単行本(2,420円・税込)で、Amazon・楽天ブックスの両方から購入できます。
全4章構成です。第1章「身近な動物たちの起源」ではイヌ(伴侶動物の起源とオオカミとの関係)・ネコ(イエネコ進化史)・ウマとロバ(文明への影響と家畜化の起源)・スズメ(鳥類最大グループの多様性)を扱います。第2章「植物とそれに依存する生き物たち」では植物と菌類の進化と相互依存、第3章「大繁栄する昆虫たち」では昆虫の進化史と植物との共進化、第4章「進化する進化生物学」では系統樹研究の最前線・分子進化学のトピック・「音楽の起源を進化学的に探る」など現代進化学の興味深い話題を扱っています(出典: ベレ出版 公式書籍紹介ページ)。
1944年新潟県生まれ、統計数理研究所名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授(理学博士・東京大学)。専門は統計遺伝学・分子進化学。1985年に木村資生氏・八木幸司氏と共同提案した分子系統樹推定の進化距離モデル「HKYモデル」が、分子系統学の標準モデルの一つとして世界中で広く使われています。日本進化学会賞・木村資生記念学術賞ほか受賞。著書多数で、本書のほかに『DNAに刻まれたヒトの歴史』(岩波書店)・『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史』(ベレ出版)・『進化38億年の偶然と必然』(国書刊行会)・『ウイルスとは何か』(中公新書)などがあります。
当ページのCTAから Amazon(紙/Kindle)・楽天ブックス(紙) で購入できます。2023年10月発売のため書店店頭でも在庫が安定しており、ベレ出版公式サイトからも購入可能です。電子で即時に読みたい場合はAmazon Kindle版が便利で、出先でもすぐ読み始められます。紙書籍はサイズ22.4 × 16cm の四六判で、家系図(系統樹)の図版が見開きで楽しめるため、紙の方が読書体験は豊かです。
分子系統学のHKYモデル共同提案者・長谷川政美が、身近な生きものの起源を最新の系統樹で読み解く327ページ。
図版・写真ふんだんで、進化を「目でたどる」一冊。